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アルガンツリーの保護
アルガンツリーと組合の女性
モロッコ南西部の千年樹であるアルガンツリーは、アルガンオイルを産出します。
タルガニン・プロジェクトは、ベルベル人の伝統を引き継ぎつつ、食用および化粧品用途の高品質なオイルを生産するために、祖先のノウハウと近代的抽出技法を組み合わせたいくつかの女性協同組合を結集するものです。
これらの女性達は、こうした製品を販売することにより収入を得ており、この収入は、彼女達が毅然として生活することを可能にし、また、今日砂漠化の脅威に直面しているアルガンツリー林の保護に貢献しています。
アルガンツリーとは
モロッコのアルガンツリー
800,000ヘクタール以上の面積を覆っているモロッコに特有の樹木アルガンツリーは、モロッコの南西部の乾燥地帯および半乾燥地帯に生育しています。
アルガンツリーは、暑さに対する抵抗力が非常に高く、50℃に達する温度に耐えることができます。この樹木は、8~10mの高さに達します。幹は短くねじれ、枝には棘があり、葉は長さ2~3cm のへら状あるいは披針形の互生葉です。
アルガンツリーの実と仁
実は、クルミ大であり、黄色で、時として赤の筋があります。この実は、果肉の多い果皮で覆われた非常に硬い種(すなわち、堅果)からできています。このアルガンの堅果内には、胚乳およびオイルを含む仁が1個から3個あり、この仁は最大55%のオイルを内含しています。 |
アルガンツリーは、多用途樹木であり、この樹木のそれぞれの部分あるいはその産物が利用可能であり、収入源であり、使用者にとっての栄養源です。
木の部分は、燃料ならびに建具材として使用され、葉および果肉あるいは実はヤギやラクダの飼料として、そして、仁はアルガンオイル用に、搾りかすは家畜の肥育に用いられています。
このアルガンツリーは、モロッコで世界的保護区を形成しており、また、この樹木はこの国において非常に重要な社会・経済上および環境上の役割を果たしています。アルガンツリー林は、1999年にユネスコにより生物圏保護区 (RBA) として認定されました。
アルガンツリー林は、飼料や食用オイルや薪を提供するだけでなく、約300万人の地方住民の生活の糧となっています。アルガンツリー林は、こうして、地方の住民を定住させ、従って、都市への大量流出現象を制限しています(年間2000万労働日)。
アルガンツリーは、生態系のバランスにおいてかけがえのない役割を果たしています。この樹木は、その強い根系により、土壌を保持し、その肥沃性を保ち、モロッコの多くの部分において砂漠化の脅威をもたらしている水や風による浸食から土壌を保護しています。
砂漠化に直面した森林
アルガンツリーが果たしている様々な役割にもかかわらず、面積および密度の両面において、アルガンツリー林の減少が見られます。森林面積の半分近くが消失し、毎年600ヘクタールが失われています。こうした減少は、主として人間の活動を原因とする生態系の不均衡によるものです。山岳地帯では過放牧や木材の過剰利用が行われており、平野部では、アルガンツリーが農業の集約化を妨げるという理由で伐採されています。
結果としての影響
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アルガンツリー保護のための危惧の声が高まっています。
いくつかのシンポジウムやセミナーが開催されました。とりわけ、下記のものを挙げることができます:
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アルガンツリーに関する国際シンポジウム、1991年3月、アガディール
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アルガンツリーに関する研究デー、1995年9月、エッサウィラ
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国際シンポジウム「砂漠化に直面した森林、アルガンツリー林のケース」、1995年10月、アガディール
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植物資源に関する国際シンポジウム「アルガンツリーならびに乾燥地帯および半乾燥地帯の植物」、1998年4月、アガディール
アルガンツリー林を保護し増加させるため、そして、アルガンツリー林の減少により危惧される結果を抑制するためのいくつかの率先的活動が開始されました。
アルガンツリー林では、国的協力から生まれたいくつかのプロジェクトが現在実施されています。
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アフリカ開発銀行の融資によるエッサウィラのひとつの村における農業・森林・田園パイロット調査
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モロッコとドイツとの協力によるアルガンツリー保護・開発
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ベルギーの資金提供による地理情報システムを用いたアルガンツリー林空間整備
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研究・開発プロジェクト:カナダのオタワにある国際開発研究センター(CRDI)の資金提供によるアルガンツリー林女性団体によるアルガンツリー製品の持続的有効利用のための技術全体の開発
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モロッコ国内のいくつかの出資者、NGOおよび機関、カナダ大使館、日本大使館、英国大使館、オランダ大使館、OXFAM-ケベック、ブリティシュ・カウンシル、国際相互扶助委員会、国際開発研究センターとの協力のもとで、イブン・アル・バイタール協会(会長:シャルーフ夫人)により開始されたアルガンオイル生産・販売協同組合
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モロッコ政府は、アルガンツリー林について生物圏保護区の認定を得ました。
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Meda II :アルガンツリー林における田園地域女性雇用増大のために欧州委員会が社会開発局 (ADS) と共に実施しているプロジェクト
本および雑誌:
「アルガンツリー:この樹木に関する知識の総括の試み」
R. Nouaim、R. Chaussod、A. El Aboudi、C. Schnabel、J.P. Peltier
「乾燥地帯および半乾燥地帯の樹木および潅木の生理学」。樹木調査グループ、出版社:Paris(フランス)、ページ377~388、1991年
アルガンツリーに関する研究デー議事録、1995年
「多用途果樹種、アルガンツリー」
O. M'Hirit、M. Benzyane、F. Benchekroun、S.M. El Yousfi、M. Bedaanoun
出版社:MARGADA(ベルギー、スプリモン、150ページ)、1998年
「Argania spinosa (L.) skeels の民族経済学、民族医学および植物化学的研究:概論」
Z. Charrouf、D. Guillaume、「J. of Ethnopharmacology(民族薬理学)」誌、1998年12月
可能な戦略:
アルガンツリーの産物を有効利用し、期待される付加価値の恩恵を森林利用者が受けることができるようにする。これにより、これらの利用者達は、アルガンツリーの保護および再植林により大きな関心を持つことができます。
アルガンオイル生産協同組合の設立のための活動は、こうした目標に組み込まれるものです。
アルガンツリーの産物を通じたアルガンツリーの経済的有効利用は、統合的田園森林管理の持続的再推進の手段となります。すなわち、樹木が食糧や商品化可能な産物や家畜用飼料の源となれば、住民は利益をもたらすこれらの樹木により自然に投資するようになるからです。